水上　勉 作品買取

1919年（大正8年）3月8日ー2004年（平成16年）9月8日　福井県出身
小説家

貧しい幼少期を過ごした影響から、庶民の立場に立つ耽美的な文学世界を展開した、戦後日本の文壇を代表する作家の一人です。

水上勉は、1919年に福井県大飯郡本郷村（現：おおい町）に生まれました。
貧しい農村の家の5人兄弟の次男として生まれ、家計を助けるために9歳で京都の禅寺に送られ、寺男としての生活を送りましたが、修行の厳しさから二度脱走するという経験をしています。

中学校時代には、寺の蔵書の小説本を無断で読み漁り文学への関心を持ち始め、中学4年時には『都新聞』に投稿をするようになりました。
中学校卒業後は、寺を出て下駄屋や薬の行商を経て1937年に立命館大学に入学しますが、半年ほどで中退し満州に渡ります。

満州では、国際運輸社の社員となって奉天に渡りますが、結核を患ったため帰国し療養生活に入ります。
療養期間中は文学書を読み漁り、水上努名義で作品を投稿し、『月刊文章』で選外佳作となり初めて作品が活字化されています。

その後、1940年に上京し、雑誌『新文学』の同人となり、職を転々としながら創作を続けます。
戦後は、宇野浩二に師事し、短編『雁の日』が宇野に褒められたことに発奮し、1948年に『フライパンの歌』を刊行します。

『フライパンの歌』は好調な売れ行きでしたが、作品の映画化が中止になったり、プライベートでは妻が家を出たことから消沈して、また体調が思わしくないことから文筆活動から遠ざかってしまいます。

洋服の行商となり一時は安定を得ますが、勤め先の洋服問屋が倒産するなど不運に見舞われます。
10年ほどの空白期間がありますが、その間も作家仲間からは小説執筆を促され、1958年に松本清張の『点と線』に刺激されて書いた推理小説『霧と影』がヒットし一躍流行作家となりました。

1960年には、水俣病を題材にした『海の牙』を発表すると直木賞候補作となり、翌年には第14回日本探偵作家クラブ賞を受賞し、社会派推理作家として頭角を現しました。

また「人間を描きたい」という気持ちから、純文学的な作品も手掛けるようになり、自分がよく知る禅寺の人間を題材にしつつ推理小説の体裁を取り入れた意欲作『雁の寺』は第45回直木賞を受賞し、新しい境地を開拓した同作は大きな反響を呼びました。

その後も旺盛な創作力で、『飢餓海峡』『五番町夕霧楼』『越前竹人形』など傑作を続けざまに発表し、1971年に『宇野浩二伝』で第19回菊池寛賞、1975年に『一休』で谷崎潤一郎賞など、多くの文学賞を受賞しました。

晩年は、闘病をしながらもワープロや音声入力ソフトなどを使いこなしながら執筆を続け、2001年に書いた最後の長編小説『虚竹の笛 尺八私考』が親鸞賞を受賞しましたが、2004年に肺炎のため85歳で亡くなりました。

代表作に『雁の寺』『飢餓海峡』『金閣炎上』など

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