田河　水泡 作品買取

1899年（明治32年）2月10日ー1989年（平成1年）12月12日　東京都出身
漫画家・画家・落語作家

擬人化した犬を主人公とした『のらくろ』シリーズが有名で、キャラクターグッズが作られるなど社会現象となるほど人気を博し、のちの漫画家にも大きな影響を与えている日本の漫画家です。

田河水泡は、1899年に東京市本所区林町（現：墨田区立川）に生まれました。
1歳で母が亡くなり、父の再婚に伴い、伯母夫婦に預けられました。

小学校入学後すると、油絵の道具箱を持って遊びに来ていた従兄の影響を受け油絵に憧れるようになり、自身も絵筆を取り始めました。
しかし、育ての親である伯父が小学5年の頃に亡くなったことから生活が困窮し、小学校卒業後はすぐに働きに出ました。

その後は徴兵され、朝鮮や満州で軍隊生活を送ります。
元から画家志望で兵役免除を願っていたので、軍では上等兵になる機会を他人に譲り、軍用鳩通信班で鳩の世話をしつつ隙を見て絵を描いていて、このマイペースな軍隊生活が、のちの『のらくろ』誕生の背景となりました。

1922年に除隊し帰国すると、画家を志し日本美術学校図案科に入学。杉浦非水、中川紀元の指導を受け、抽象画を描きました。
翌1923年には前衛美術グループ「MAVO（マヴォ）」に参加し、高見澤路直を名乗り活動しました。

学校を卒業後は、展示装飾や広告デザインの仕事をしていましたが、もう一つの夢であった文筆業への道も目指し、当時の大衆紙に載っていた落語や講談に目をつけ、新作の落語の執筆を始めます。
1926年には、講談社に持ち込んだ落語が『面白倶楽部』に採用されると、講談社の別の雑誌からの執筆依頼をもらうようになり、落語作家として売れっ子になりました。

落語作家として活動する中で、美術学校出身の経歴から落語の挿絵も描いてほしいという依頼をもらうようになり、落語と掛け持ちで漫画の執筆を始め、1928年には初の連載漫画『目玉のチビちゃん』が『少年倶楽部』で連載開始しました。

1931年からは、『少年倶楽部』の新年号より『のらくろ二等卒』の連載を開始します。
同作は舞台を軍隊に設定し、自らの徴兵体験を反映させた独特の世界観の作品で、当初は「志願兵で2年満期除隊」という構想で連載が始められましたが、非常に人気が出たために主人公の階級が上がるたびにタイトルを変え、1941年に軍の方針で打ち切られるまで異例の長期連載作となりました。

『のらくろ』の爆発的な人気からその影響力はすごく、幼い頃の手塚治虫はのらくろを模写して漫画の技術を学び、『サザエさん』の作者・長谷川町子は1934年に田河に弟子入りしていて、日本の漫画黎明期の作品として大きな影響を残しています。

戦後は『のらくろ』の執筆を再開し、1958年からは『のらくろ自叙伝』の連載を開始するとこれがリバイバルブームのきっかけとなり、1967年には戦前の『少年倶楽部』で連載した第1回から連載中止までを全部収録した『のらくろ漫画全集』を刊行すると、この全集により第二次のらくろブームが起きました。

また、漫画以外にも日本人の笑いの研究も手掛け、1981年に漫画や落語を題材として笑いを解説した研究本『滑稽の構造』を刊行するなど文化人的な一面もあり、晩年の1987年には旭日小綬章を受章し、1989年12月12日に90歳で亡くなりました。

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