『中野重治全集 全28巻』をお譲り頂きました。

千葉県浦安市のお客様からご依頼を頂き、古書をお譲りして頂きました。

今回のお客様は、ご自宅の整理の為に過去に買い揃えた書籍の処分を検討していたところ、当店の宅配買取を見つけ興味を持ってご相談頂いたそうです。
当初は古書店へ直接持ち込みも考えましたが、数量が多かったため手間がかかり、また蔵書のジャンルが多岐に渡るため、異なるジャンルでもまとめてしっかりと査定が可能な古書店を探して、最終的に段ボール箱に買取希望の品を詰めて宅配便で送るだけの手軽なところが魅力となり、当店の宅配買取を選んだそうです。

実際に送って頂きました書籍は、国内外の作家の作品の年代やジャンルを問わない幅広いもので、お客様の読書愛が伝わってくるものでした。
全集などのセットの書籍も、全巻揃いで函や月報などもしっかりと揃っている状態の良いものばかりで大事にされてきたことが伺えました。
買い揃えるのにかなり手間が掛かったので、しっかりとした評価をしたうえで査定金額を提示してもらいたいとのご要望でしたので、いつも以上に丁寧に査定作業を行わせて頂きました。
状態が良かったこともあり、査定金額も頑張らせて頂きましたが、ここに買取を依頼して良かったとお客様も満足されていて、とても嬉しかったです。

今回お譲りして頂いた書籍の中からご紹介するのは、『中野重治全集 全28巻』です。

中野重治の全集は、筑摩書房より三度発行されていますが、お譲りして頂いた本書は1976年から80年にかけて発行された第二次の全集です。

中野重治は、マルクス主義やプロレタリア文学運動などへの参加し、戦前の軍国主義への反抗の弾圧から検挙されるなど活動家としての一面も持ち、作品も抒情性と戦闘性をあわせもった作風から「革命詩人」と呼ばれています。

そんなところから攻撃的な印象ばかりが先行しがちな中野重治ですが、残した作品は心に残る言葉がいたるところに散りばめられた名作ばかりです。

本全集には収録されていませんが、生前の手紙をまとめた『愛しき者へ』では、獄中や旅先から妻や母に宛てて書かれた手紙の数々から、取り繕うことのない本来の姿を垣間見ることが出来、中野重治のイメージがガラッと変わります。
また愛情深いロマンチストな文面から、やはり中野重治は詩人なのだと実感させられます。

自伝的小説といわれている長編小説『梨の花』では、少年の視点から淡々と平凡な日々が綴られ、大きな事件などは起きず静かに展開されていく子供の日常は、読んでいて心地良く、この少年に愛着が湧いてきます。
読後は自身の子供時代に思いを馳せたくなるような、何とも不思議な、心が穏やかになる味わい深い作品です。

独自の文学を貫き革命家としても活動した、多彩な中野重治の作品がまとめて楽しめる素晴らしい全集なのではないでしょうか。

全集などのセットの書籍は、冊数が多くなりスペースにお困りの方も多いのではないでしょうか。
そんな全集の処分をご検討の方は、是非一度当店にご相談ください！